主任 新井 喬順は、出張を控えていた。
出張先は北の大地、北海道。
彼の妹が、息子を出産した為
出張の休日を利用して、甥に会いに行けることも 自然、彼の足取りを軽くしていた。
主任 新井 喬順は、北海道生まれである。
彼の容貌が、骨柄逞しく・その肌が東南を思わせる赤銅を帯びていても 。
彼の性格が、茫洋としながらも細事にまで目が届き、決断を行う時には素早く
且つ、一度決めてしまえば
その後、頑としてその決断を翻す事のない、東洋的な指導者の特性を備えているにしても
紛れもなく、北海道の生まれである。
主任 新井 喬順は、エレガントである。
例え、極寒の荒れる海原を思わせる荒々しい荷物の積み方をみせても
その着荷の瞬間は、驚くほどに静かだ。
まるで、羽毛が着地するかの様な静謐さを魅せる。
※社有車は、丁寧に扱いましょう※
主任 新井 喬順は、束縛を嫌う。
例えそれが、皆が羨む様な深窓の令嬢であろうが彼には関係ない。
だが、ともすれば、対極的にもみえてしまうが
社会のルールは遵守する。
ベルトの束縛が、精神的・肉体的にキツくとも…
その様な柔軟さも持ち合わせている事に、ただ驚愕せざるを得ない。
主任 新井 喬順は、決して後ろを振り返らない。
只々、前だけを見据えて一歩づつ、そう一歩づつの前進を積み重ねていく事ができる。
そう、彼には後ろを振り返っている暇はないのだ。
主任 新井 喬順は、スマートである。
見た目が、…などと取るに足らない事などではなく
そのライフスタイルがである。
余分な事物は削ぎ落し、必要とする事物のみで彼の日常は構成されている。
主任 新井 喬順は、人と人の和を尊重する。
ビジネスを円滑に進める為に、まずその最も優先している事は
着任時における第一印象である。
相手を思いやり、真心を込めて選び抜いたお土産は、必ず相手の心を開く…。
彼はそう信じて疑わないし、裏切られた事も
…彼にはない。
この表情は、苦悶の表情である。
彼には全く『諦念』や『妥協』『その場しのぎ』といった概念は、存在しない。
主任 新井 喬順は、休息を必要としない。
業務用の携帯を貸与されるに至った彼には、終始大小の事案が寄せられる。
彼が、皆に必要とされ・愛されている証である。
その一つ一つを丁寧に、且つクレーバーに、最速・最短のルートを会話の最中に見つけだしながら
最終的な互いの妥協案、着地点を見つけだす。
会話とは意見の交換であり、意見の尊重が根底にあって成り立つ事を
彼は、経験から知っている。
『焦り』や『怒り』は、解決からは程遠い感情である。
高く、広い視野により、俯瞰的な立ち位置から『Give & Take』の関係を構築していく
決して、一時の感情に流され『怒り』を顕にする事はない…。
主任 新井 喬順
この春
彼の生まれた大地にて
何を手に入れ、そして失う事になるのか…。